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IaaSのメリットとデメリットをわかりやすく解説
コロナ禍で働き方も大きく変わりクラウドシフトが進む中で、IaaSを活用する企業が増えています。未導入の企業においても、リモートアクセスの増加に伴うITインフラへの負荷増大などを解消し、テレワークに適したIT環境を整備したいという思いから、クラウドサービスの見直しに際して、IaaSのメリットを把握しておきたいという方も多いのではないでしょうか。
IaaSを取り入れることで、クラウドであっても自社にあったカスタマイズ性あるシステム構築が可能になります。また、オンプレミスサーバーよりも、システム管理者の負担が少ないことも導入する企業数が加速している理由の一つです。
本記事では、オンプレミスシステムのIaaS移行を検討している方に向けて、IaaSのメリットとデメリットを整理した上で、IaaS、PaaS、SaaSのメリットの違いについて簡単に解説します。
▼ 目次
・IaaSのメリット
・IaaSのデメリット
・比較してわかる、IaaS、PaaS、SaaSのメリットの違い
1. IaaSのメリット
IaaSの持つメリットとして、以下6点を紹介します。
1-1. 自社に物理サーバーを置かなくて良い
IaaSの1点目のメリットは、自社に物理サーバーを置かなくて良いことです。
IaaSでは、物理サーバーを購入する必要がなく、契約すればすぐにOS周りのインフラが整った環境をインターネット上で利用できます。
クラウドサービスが含まれている本体は、セキュリティが非常に高いデータセンターなどの安全な環境に置かれており、クラウドサービスの提供会社が管理しています。
自社で物理サーバーを持たないことによって、以下のメリットがあります。
- ハードウェアを購入する必要がない
- 初期費用が少なくて済む
- どこにサーバーを置くか物理スペースを考える必要がない
- 物理面でのセキュリティ対策を考慮する必要もない
- 必要な時にすぐにサーバーを導入できる
- 必要な数だけ仮想サーバーを追加できる
IaaSを利用することで、従来悩んでいたサーバーの物理的な問題を考える必要もありません。物理スペースを意識せずに必要なときに、必要な数だけサーバーを追加できます。
ご参考までに、社内の管理部門ごとに分散した業務システムをIaaSに集約することで、運用負荷の軽減を実現された企業の事例をご紹介します。
1-2. コスト削減
IaaSの2点目のメリットはコスト削減です。
IaaSは導入初期費用、ランニングコストどちらにおいてもコスト削減に繋がります。
従量課金制のため、最初に数十万もするサーバーを購入する必要もありません。初期費用を抑えられるため、オンプレミスサーバーに比べて導入のハードルも下がります。
構成したスペック、システムに必要なメモリ、CPUなどだけで済みますので、余計なスペック分の料金を支払う必要もありません。契約後も必要に応じて都度リソースを追加することも可能です。
ランニングコストについては、従量課金制を活かした使い方をすれば、オンプレミスよりもコストを抑えることも可能です。
また、急な障害が発生した際にも、復旧するためハードウェアを追加で購入する、システムの改修費用が必要になるといった予想外のコストが発生しません。
IaaSを利用すれば年間費用がほぼ一定であるため、コスト削減できるうえにIT投資を可視化できます。
従量課金制のIaaSについての詳細は、以下をご覧ください。
1-3. 利用シーンに合わせたシステムの拡張・縮小が容易
IaaSの3点目のメリットは、利用シーンに合わせたシステムの拡張・縮小が容易であることです。
契約開始後も必要なときに必要なだけCPU、メモリ、ストレージ容量などのハードウェアリソースを変更できるからです。
例えば、IaaS利用開始時は利用ユーザーも少ないためスモール構成としたい場合、仮想サーバー1台、CPU/メモリも最小のみで開始できます。
システム稼働が軌道に乗ったら利用ユーザーも増やしていき、メモリを増設するといった対応も柔軟にできます。
IaaSでは、利用状況に応じたスケールアップ・ダウンに柔軟な対応が可能です。
1-4. 自由に環境を構築できる
IaaSの4点目のメリットは、自由な環境を構築できることです。
IaaSではOSやネットワークなどのインフラのみが提供されており、自社で使いたいプラットフォームやアプリケーションを自由に選べます。
具体的には、OSの種類(Windows/RedHat/CentOS等)、CPU、メモリストレージ、ネットワーク、バックアップ世代などを選びます。その上で、以下のような構成を自社で自由に構成することが可能です。
- データベース
- プログラム言語
- アプリケーションソフトウェア
- ウイルス対策ソフト
- 監視ソフトなど
IaaSを利用すれば、柔軟にプラットフォームやアプリケーションの構成を決めた上で自社のペースで構築、稼働できます。他のPaaSやSaaSなどのクラウドサービスでは実現できないような、自社の強みを活かしたシステムを実現できます。たとえば、IaaSをリモート開発環境として使用することで、開発エンジニアがテレワークにおいても組込み開発が行えるようになります。
1-5. システム管理者の負担軽減
IaaSの5点目のメリットは、システム管理者の負担軽減につながることです。
システム管理部門にとって負担が大きいOS・インフラの運用を信頼できるベンダーに任せられるのです。
IaaSでは、以下作業をベンダーが担当することが可能です。
- 定期的なOSのアップデート
- プロトコル監視
- Pingなどのネットワーク疎通確認
- OS/ネットワークのダウン時対応
- ネットワークサービスの急な不具合対応
- 安定稼働のための定期的な再起動とメンテナンス
従来のように、システムメンテナンスのために自社システム管理部門が夜間休日出動してOSアップデートやパッチ適用する、といったこともIaaSを利用すればなくなります。
IaaSを利用することで、システム管理部門の負担を大幅に軽減することが可能です。
1-6. BCP対策が容易
IaaSの6点目のメリットは、BCP対策が容易であることです。
IaaSのクラウド環境を構成しているサーバー本体は、セキュリティレベルの高いデータセンターなどに設置されています。
仮に、地震などの自然災害で自社が被害にあったとしても、サーバーに被害が出て業務が止まることがないように留意されています。
さらに、BCP対策専用のサーバーを本番環境システム設置のデータセンターと分散して設置すれば、万一本番環境に障害が発生してもシステムを切り替えて業務を継続できます。
IaaSを利用することはBCP対策にも役立っています。
ご参考までに、基幹業務システムを IaaS に移行することにより、BCP / DR (Disaster Recovery) の強化を実現された企業の事例をご紹介します。
2. IaaSのデメリット
メリットを知る上で、IaaSが持つ以下3点のデメリットについても正しく把握する必要があります。
2-1. 専門性が求められる
IaaSの1点目のデメリットは、専門性の高さが求められることです。
OSやネットワークなどのインフラ周りはサービスとして提供されていますが、アプリケーションはもちろん、プラットフォームやプログラミング環境の構築などは自社で行う必要があるからです。
そのため、データベースの知識やプログラミング言語などに精通した人材が必要となります。また、OSやネットワークの設計も自社で行うため、パラメータに関する知識も必要となります。
ただし、ITに関する専門性はそれほど高くないがIaaSを利用したい、という場合は信頼できるベンダーを選定すれば可能です。
OSやプラットフォーム周りに関する設計・構築のアドバイスを受けることもできるので、相談できるベンダーを慎重に選定しましょう。
2-2. 運用負荷
IaaSの2点目のデメリットは、メンテナンス範囲の広さによる運用負荷が高くなることです。カスタマイズ性に優れていて自由度が高くなる半面、自社で管理しなければならない運用範囲が増えます。
具体的な管理範囲として、以下が挙げられます。
- OSのリソース管理(CPU、メモリ、ストレージ容量)
- データベース管理(アクセス、バージョンなど)
- プログラミング言語管理(バージョンなど)
- アプリケーションの利用管理
- アプリケーションのアクセス管理など
IaaSでは、自由度が高い分自社の保守範囲も広くなることに注意しましょう。
ただし、選定するベンダーによっては、上記の運用管理を支援するサービスを提供しているため、自社の負荷が高くならずに済ませることも可能です。
2-3. セキュリティリスク
IaaSの3点目のデメリットは自社で負うセキュリティリスクの範囲が大きいことです。
クラウドベンダーのセキュリティの担保は、基本的にインフラ周りのみです。OSの基本的なネットワーク監視はベンダーが行いますが、自社で構築したプラットフォームやアプリケーションに関しては、自社でセキュリティメンテナンスをする必要があります。
アプリケーションの最新版へのバージョンアップ、社外からのアクセス管理など、どのようなセキュリティリスクがあるのか注意しましょう。
特に、オンプレミスからクラウドサービスへと利用を移行や拡大する場合、これまでの社内ネットワークとは違って社外ネットワークを利用することになるため、不正アクセスなどの危険性も高まります。
ただし、サポートが充実したベンダーもあり、提供されるセキュリティ対策の範囲が変わりますので、事前にどのような支援を受けられるのかを確認するのがよいでしょう。
上記に挙げたいずれのデメリットも、選定したベンダーからサポートを得られれる場合があるため、解消することが可能です。
3. 比較してわかる、IaaS、PaaS、SaaSのメリットの違い
IaaSのメリットを他の代表的なクラウドサービスSaaS、PaaSと簡単に比較していきましょう。
3-1. IaaSのメリットとは
IaaSの最大のメリットは自由度の高さにあります。
自社で自由に構築できるため、システムの切り替え・移行を自分たちの手で柔軟に行えるというのが最大のメリットです。
3-2. SaaSのメリットとは
SaaSは自社の負担が少なく、契約すればすぐにサービスを利用できますが、提供された機能のみの利用となります。
IaaSのメリットを認識した上で、どのクラウドサービスが自社に適しているかを見極め、検討段階からPoC(概念実証、コンセプト検証)に進み、検討の妥当性の評価を実施することが大切です
PoCの意義と進め方についての解説は、以下よりご欄いただけます。
3-3. PaaSのメリットとは
PaaSはソフトウェアを選択できますが、プラットフォームまで予め決まっているため、カスタマイズや移行が思うようにできない場合が多くあります。
尚、IaaSとSaaS、PaaSの違いを、さら詳しくお知りになりたい方は、以下より解説をご覧いただけます。
まとめ
本記事では、IaaSのメリットとデメリットについて詳しく解説してきました。
IaaSの主なメリットは下記の6点です。
- 自社に物理サーバーを置かなくて良い
- コスト削減
- 利用シーンに合わせたシステムの拡張・縮小が容易
- 自由な環境を構築できる
- システム管理者の負担軽減
- BCP対策が容易
一方、IaaSの主なデメリットは下記の3点です。
- スタッフに専門性が求められる
- PaaSやSaaSと比較すると運用負荷が高い
- セキュリティリスク
これらのデメリットは、ベンダーによるサポートによって解消することが可能です。
IaaSは他社との差別化を図れる、自由度の高いクラウドサービスです。IaaSのメリット・デメリットを正しく理解した上で、自社の強みを活かしたシステムを構築しましょう。
また、本記事で解説したIaaS、PaaS、SaaSの他に、クラウドの種類や活用形態があります。
パブリッククラウドとプライベートクラウドの違い、ハイブリッドクラウドとマルチクラウド、XaaSの解説については、以下よりご欄いただけます。