客観的事実をもとに業務を可視化・改善! 「プロセスマイニング」と「タスクマイニング」

客観的事実をもとに業務を可視化・改善! 「プロセスマイニング」と「タスクマイニング」

はじめに

 多くの企業が、社内業務をデジタル技術で変革し、業務効率を向上させたいと考えています。しかし、その実現には「業務の可視化」という大きなハードルが存在します。
 従来は、業務担当者へのヒアリングやアンケート調査、業務現場の観察によって可視化が行われていましたが、これには膨大な時間と労力が必要であり、客観的なデータの取得が困難でした。
 そこで注目されているのが「プロセスマイニング」と「タスクマイニング」です。本記事では両者の概要と違い、成功に必要な5つのポイントについて解説していきます。

▼ 目次
1.社内業務のDXで大きなハードルとなる「業務の可視化」
2.ログデータで客観的に業務を可視化するプロセスマイニングとタスクマイニング
3.プロセスマイニングとタスクマイニングの違い
4.タスクマイニングによる可視化内容とそれを改善につなげるための5つのポイント
5.プロセスマイニングによる可視化内容とそれを改善につなげるための5つのポイント

 

1.社内業務のDXで大きなハードルとなる「業務の可視化」

 日本でもすでに多くの企業が推進しているDX。その中でも、特に注目されるテーマの一つがデジタル技術を活用して社内業務を変革し、効率や生産性を高めていくことです。しかし、社内業務のDXを進めようとすると、大きな壁に直面することがあります。社内業務を変革するには、まず現状の業務を可視化しそこから課題を洗い出していく必要がありますが、この「可視化」が思わぬ難関となることがあります。

 業務の可視化を行う方法としては、現場で業務に携わっている従業員へのヒアリングやアンケート調査、業務現場の観察などを行い、それに基づいて課題を把握する方法が考えられます。しかしこの方法では調査作業に多大な時間と労力が必要であり、肝心の業務変革になかなか踏み出せないということがよくあります。

 また、ヒアリングや人による観察には主観が入り込みやすく、そこから抽出した課題と実際の課題に「ズレ」が生じる危険性があります。さらに、可視化の段階で主観が入り込んでしまうと、改善ポイントに関する議論が関係者の間で「ブレ」やすくなり、全体最適化につながる合意が得られにくくなる問題も生じます。その結果、関係者の合意が得られやすい「部分最適化の改善」に終始してしまい、大きな効果を挙げにくくなってしまいます。

 実際に改善に着手した後にも問題が残ります。改善効果を測定しようとしても客観的なデータがないため、改善効果を定量化するのが困難であり、その結果から次の施策を立案・実施することも難しくなります。そのため改善サイクルを継続的に回すことも困難になるのです。

 このような経験をした人であれば「業務の可視化自体がDXできないのか」と考えるでしょう。デジタル技術を活用し、主観的な調査ではなく「客観的なデータ」で業務を可視化できれば、その内容の説得性も高くなり、より客観的な議論によって全体最適化につながりやすくなります。

 実際に、このような望みを叶えるソリューションがすでに存在しています。それが「プロセスマイニング」と「タスクマイニング」です。

 

 

2.ログデータで客観的に業務を可視化するプロセスマイニングとタスクマイニング

 いずれにも「マイニング」という言葉がついていますが、これは「データマイニング」に由来しています。つまり、問題解決につながる洞察を得るために、データを「マイニング(掘り下げる)」し、有用な情報を抽出しようというのです。それでは「タスクマイニング」と「プロセスマイニング」の違いは何でしょうか。

 ここで、社内業務を大きく4種類に分けてみましょう。

図1「業務の可視化/改善領域は、大きく2つ、さらに4つに分かれます」

 業務はまず「(Ⅰ)PCを利用する業務」か「(Ⅱ)それ以外」かで、大きく2分できます。さらに、PC利用業務は「(Ⅰ―①)基幹/クラウドシステム等を利用した業務」と「(Ⅰ―②)Office製品等を利用したローカル環境での業務」があります。一方PC非利用の業務は「(Ⅱ―①)PCを使わない社内業務」と「(Ⅱ―②)フィールド業務」にが含まれます。

 データによる業務マイニングが可能なのは、これらのうち(Ⅰ―①)と(Ⅰ―②)の業務になります。これらの業務には情報システム内にログが残っており、これを分析することで業務を可視化ができます。プロセスマイニングは、(Ⅰ―①)の業務を可視化・改善するための手法であり、業務システムやアプリケーションに蓄積された各種イベントログを利用します。タスクマイニングは、(Ⅰ―②)の業務を可視化・改善する手法であり、従業員の業務PCに蓄積された操作ログを利用します。

 この2つの手法を活用することで、客観的なデータに基づいた業務可視化が可能になり、より全体最適につながる改善策を立案しやすくなります。また改善の効果を定量化しやすいため、継続的な改善サイクルの実現も容易になるのです。

図2「プロセスマイニングやタスクマイニングを活用することで改善サイクルの実践が可能です」

 

 

3.プロセスマイニングとタスクマイニングの違い

 ここで注意すべき点は、どちらか一方だけを行うのではなく、可視化のために使用するデータや改善対象が異なるため、期待できる効果も異なるということです。以下のように、プロセスマイニングとタスクマイニングは異なるアプローチであり、それぞれに長所と短所があります。

図3「タスクマイニングとプロセスマイニング_比較」

 プロセスマイニングは、業務システムからイベントデータを抽出し、それを業務フローにマッピングする必要があります。そのため、イニシャルコストやランニングコストが高めになりますが、プロセス全体に対する改善効果が期待できます。ただし、各個人の作業は見えにくいという問題があります。

 一方タスクマイニングはPC内のログだけで完結できるため、イニシャルコストやランニングコストは抑えられます。しかし、改善効果はプロセスマイニングに比べて低くなる傾向があります。また、作業内容の詳細は把握できますが、プロセス全体が見えにくいという問題があります。

 いずれも一長一短がありますので、目的に応じて使い分けるか、あるいは両方を組み合わせて利用することが重要です。

 

 

4.タスクマイニングによる可視化内容とそれを改善につなげるための5つのポイント

 それでは具体的に、どのような形で可視化ができるのでしょうか。まずはタスクマイニングから見ていきましょう。

 タスクマイニングでは、PC上で稼働する「アプリケーション」や「ウィンドウタイトル」をもとにに業務を可視化します。主要な可視化項目は以下の通りです。

図4「タスクマイニングは、アプリやウィンドウタイトルベースで業務を可視化していきます」

 これらのデータによって「誰が」「いつ」「何を」「どれくらい」していたかがわかります。しかし実際にこのようなデータが取得できても、次のステップにつなげることは容易ではありません。例えば「思った以上にExcelを使っている」「Zoom会議が多い」といったことがわかっても、「それで何をすれば良いのか?」という問いに答えるのは難しいのです。

 タスクマイニングを改善に結びつけるには、以下の5つのポイントに留意する必要があります。

1.ゴールの明確化

 改善には、はっきりした目標が不可欠です。対象業務を限定し、可視化の結果からどのような行動を起こしたいのかを明確にしましょう。

2.担当者のロール(役割)定義と業務一覧の作成

 次に、調査対象となる従業員の役割と業務を明確にし、それに応じた業務一覧を作成します。「全員のログを集める」というアプローチは避け、データが膨大になることを防ぎましょう。従業員1人あたりのデータ量だけでも、約60万レコード/月に上る可能性があるからです。

3.業務とシステム/ファイルとの紐づけ

 業務一覧と関連するシステムやファイルをマッピングします。過度な詳細化は避け、必要な情報のみを結びつけるようにします。

4.データの整理

 大量のデータを効率的に扱うために、BIツールの活用を検討します。Excelでは処理が困難な場合があるため、適切なツールを選択しましょう。

5.改善方法/モニタリング方法の検討

 最初に決めたゴールに基づいて改善策を検討すると同時に、改善効果をモニタリングするための方法も検討します。これにより、継続的な改善サイクルを回すことが可能になります。

 

 

5.プロセスマイニングによる可視化内容とそれを改善につなげるための5つのポイント

 次に、プロセスマイニングによる可視化の具体例を見ていきましょう。以下の示すのは「Celonis」というプロセスマイニングツールの画面例です。

図5「フロー分析」の画面例」

 時系列の業務フローと経過時間のマッピングや、プロセスの遷移パターン(バリアント)、アクティビティ間の関係性(コネクション)など、多面的に業務プロセスを可視化できることがわかります。これらの情報を活かして業務を改善していくには、以下の5つのポイントに留意する必要があります。

1.ゴールの設定と業績指標(KPI)の明確化

 業務プロセス改善では、ボトルネックの特定や手戻り、違反プロセスの排除など、問題を明確に把握することが肝要です。そのため明確なゴールや重要な業績指標(KPI)を設定しておく必要があります。

2.業務/対象システムの選定

 次に、改善の対象となるシステムを選定します。対象を絞り込むことで初期コストを抑えやすくなると共に、データ分析や準備にかかる時間を短縮できます。これにより、改善の成果をより早く実感することが可能です。

3.可視化のポイント(パターン分析・経路分析)

 事前に明確化したKPIに基づき、可視化のポイントを明確化します。プロセスマイニングでは様々な可視化データが得られるため、問題の本質を抽出するために、見るべきポイントを絞り込むことが重要です。

4.ディスカッション(現場を交えて)

 業務プロセスの改善には関係者の合意が不可欠です。そのため可視化された情報をもとに、現場関係者とのディスカッションを行うことで、客観的なデータを通じた前向きな議論が促進されます。これにより、全体最適化に向けた改善策が生まれやすくなります。。

5.改善策の決定と効果測定

 十分な議論を行った後、採用する改善策を決定し、実行に移します。同時に、KPIの測定方法やプロセス改善ツールの導入も検討します。これにより、継続的なプロセス改善が容易になります。

 

 

6.まとめ

 本記事のポイントをまとめると以下のようになります。

▶社内業務のDXを推進する際に、大きなハードルのなるのが「業務の可視化」です。

▶その可視化を可能にするのが「タスクマイニング」と「プロセスマイニング」です。

▶両者はログデータを活用して業務を客観的に可視化しますが、違いがあるため、使い分けるか併用することが必要です。

▶タスクマイニングとプロセスマイニングそれぞれの可視化内容と、実際の改善に向けての5つのポイントを解説しました。

 重要なのは、プロセスマイニングとタスクマイニングの違いを理解して最適な方法を選択すること、可視化した内容を実際の改善に結びつけること、そして継続的な改善プロセスを実現していくことです。

 CTCではタスクマイニングやプロセスマイニングの支援に加え、可視化した後の対応までを含めた事前コンサルティングが可能です。ハンズオンも開催していますので、まずはプロセスマイニングやタスクマイニングを体験してみることをお勧めします。

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