第1回 次世代IT運用の挑戦:現状と未来を見据えた取り組み

第1回 次世代IT運用の挑戦:現状と未来を見据えた取り組み

ここ数年、企業はハイブリッドクラウドの導入を進め、システムの柔軟性とコスト効率の最適化を目指しています。 その一方で、サイバーセキュリティの脅威が増大し、システムの構成が複雑化する中で、セキュリティ対策箇所も増加しており、全体を俯瞰して管理するのが一層困難になっています。そのため、リスク管理と防衛策の強化がますます重要となっています。

また、自動化やAIの導入による運用効率向上が期待されている一方で、深刻な人材不足も課題となっています。IT運用の現場では、より高度な技術力と迅速な対応が求められています。

CTCは10年以上にわたってマネージドサービスを提供していくなかで、多くの課題を乗り越えてきました。このシリーズでは、次世代のIT運用を目指すCTCの取り組みを3回にわたって共有していきたいと思います。

▼ 目次
・【第1回】次世代IT運用の挑戦:現状と今後を見据えた考え方
【第2回】※近日公開 次世代IT運用の挑戦:具体的な課題と取り組み状況
【第3回】※近日公開 次世代IT運用の挑戦:実績と成功事例の紹介

■第1回 次世代IT運用の挑戦 :現状と今後を見据えた考え方

1. マネージドサービスプロバイダーとしての現状

現代のビジネス環境において、IT運用は企業の成長に欠かせない要素です。
CTCはマネージドサービスプロバイダーとして、提供基盤となるシステムやネットワークに対し「ITシステム・サービスの安定稼働」と「運用コスト削減」を運用上の重要なテーマとして掲げ、それに基づいた運用を続けてきました。この2つのテーマに対し、CTCが日々どのような運用を行なっているのかをご紹介します。

システムの安定稼働のためのリモート運用・監視
ダウンタイムを最小限に抑えるべく、システムの常時監視を行い、障害を早期検知することで、システムの安定稼働を目指しています。

ツールを活用したインシデント対応
システムの障害やトラブル発生時に、迅速に対応し復旧するプロセスを構築し、各種ツールを活用し効率的なインシデント対応を行っています。

予防保全とメンテナンス
システムやネットワーク障害を防ぐための定期的な保守・メンテナンス作業を行い、ソフトウェアやハードウェア更新を行っています。

有事に備えたバックアップとデータリカバリ
重要なデータの保全と迅速な復旧を目的とし、定期的なバックアップにより、障害やサイバー攻撃、災害時のデータ損失リスクを最小限に抑え、迅速なリカバリを行っています。

セキュリティ対策
ファイアウォールや侵入検知システム、アクセス制御の導入はもとより、定期的な脆弱性診断とセキュリティパッチの適用により、堅牢なシステム基盤運用の維持に努めています。

効率的なリソース管理
サーバ、ネットワーク、ストレージ等の物理リソースの使用状況を可視化・把握することで、リソース面での安定稼働の維持に努めています。

2.私たちが直面したIT運用の課題と、次世代のIT運用を目指す背景

サービスの多様化とその一元的な管理

一方で、企業のシステム環境においては、クラウドインフラの利用が急激に増大し、それに伴うITシステムの管理や運用が以前よりも複雑化しています。さらに、クラウドとオンプレミスのハイブリッド環境での運用が主流となり、管理体制を一元化することも難しくなっています。

多くの企業ではサービスの安定稼働を維持することが最優先事項であると同時に、複雑化した運用をどのようにして効率的に行うかが大きな課題となっています。

  • 昼夜問わず発生する数千から数万のアラートに少数のオペレーターが対応。すべてのアラートが重要で対応が必要とは限らず、アラートの選別に多大な労力をかけざるを得ない状況が発生している
  • 異なるシステムを管理するため、多様な管理ツールを使い分ける必要があり、全体の状況を把握するのが難しい。運用効率が低下し、担当者の負担も増大。とは言え、担当者の補充には人材確保や育成が簡単ではない状況である
  • クラウド環境の利用が増える中、複数のクラウドプラットフォームが乱立し、管理が煩雑化、属人化している。パブリッククラウドの運用が複雑になり、管理工数やコストの増加が避けられない
  • セキュリティパッチの適用を行う際にも、システム構成の把握や影響範囲の確認、適用後のチェックなど、複数のステップが必要であり、手間や時間がかかり、セキュリティ対策にかかる労力が大きくなっている

実際の運用現場で私たちが直面したこれらの課題はIT運用の現場に携わる読者のみなさまにとっても、共通する課題ではないでしょうか。私たちがマネージドサービスを提供するお客さまは、クラウドの利便性を最大限に活用し、効率的な運用を求めています。しかし、従来と同じ運用プロセスではそのニーズに応えきれないケースが増えています。

人手不足と人件費の高騰

もう一つの大きな課題は人手不足と人件費の高騰です。
クラウドインフラをはじめ多様化するシステム運用に対応するためには、運用に携わる人材の確保が欠かせません。優秀なIT人材の確保が難しくなり、さらに、その人材の育成には時間とコストがかかります。

また、IT人材の不足に伴い、人件費が高騰していることも深刻な問題です。運用チームを増強し、従来の運用プロセスを維持しようとすれば、より多くの人材を雇い、育成する必要があります。これにかかるコストは年々上昇しており、企業のIT運用予算を圧迫する状況にあります。

2023年8月にCTCが従業員1,000名以上の企業のIT担当者向けに独自に調査した結果によると、今後の取り組みを進めていく上での課題として「投資・運用コスト」は35.3%とセキュリティ対策に次いで高い結果でした。

このままでは、従来の運用プロセスを維持することすら困難になる可能性があり、サービスの安定稼働を保証するためのリソースが確保できなくなる懸念が高まっています。

図1_「ハイブリッド環境に向けた意識調査」の結果より抜粋(CTC社内調査結果より)※2023年8月実施

3.従来の運用プロセスの限界と次世代への移行

CTCではこれらの課題や背景を踏まえ、従来からの運用上の重要なテーマである「ITシステム・サービスの安定稼働」と「運用コスト削減」 の両立を模索していましたが、取巻く環境の変化が複雑になったこともあり、従来の運用プロセスだけで解決を実現することは困難であると結論づけました。

私たちが目指す「次世代のIT運用」では、自動化技術の導入やAIを活用した予防保全やメンテナンスが重要な役割を果たします。これにより、人手に依存しない運用体制が確立され、人的リソースのリスキリングにより、他の重要な業務に振り向けることが可能となります。

たとえば自動化技術の採用によって、クラウドインフラの自動監視や管理、システム障害の予測とその回避が、迅速に行われるようになります。また、ハイブリッドクラウド環境やセキュリティ対策においても、自動化されたツールやプロセスを導入することで、複雑な環境を一元的に管理できるようになります。自動化技術により、システムの安定稼働を確保しつつ、運用コストの最適化が図られます。

CTCでは、将来に焦点を当て、あるべき姿を設定し、現状とのギャップから生じる課題を解決する「設定型の課題解決」を次世代のIT運用に向けた手法として採用し、全体的な戦略を再構築することにしました。従来の運用モデルを見直し、「あるべき姿」に向かって組織全体で取り組む基盤を作り上げ、より効率的で自動化された次世代のIT運用体制を構築することに取り組んでいます。

次回は、「第2回 次世代IT運用の挑戦:具体的な課題と取り組み状況」として、具体的な取り組み状況をご紹介いたします。

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